ジャケ写

  • Hemi "s/t"CD.(BIG MONEY INC / BMI-031 CD)

 サンフランシスコの4人組の、おそらく唯一のアルバム。1992年産。
 このアルバム、なかなかややこしい構成になってまして、過去にリリースされた4枚のシングルの楽曲に新録曲を足しているのですが、収録順はランダムだったり、何気に2ndシングルのB面曲だけ収録されてなかったりという謎仕様。その曲だけ外した理由が知りたいw。
 それはさておき、このバンドの音なのですが、西海岸で活動してたにも関わらず、かなり埃っぽいロック・サウンドを聴かせてくれます。Zipgun*1とか後期Poison Ideaとか"Too Far Gone"の頃のHard-Onsとか、そういう系譜。Brand New UnitやBeowulfからメロディを抜いたような感じでもある。
 Glenn DanzigとJello Biafraを足して割ったような*2ムーディな声質で意外ときっちり歌いあげるvoxと、基本的にナチュラルな音色でドライブ感満点のリフ・ワークをこなしつつ、随所に味のあるフレーズやカラフルなトーン・ワーク、アクセント的に効かせる小技なんかを巧みに織り込んでくるGとが曲を彩り、リズム隊が腰の入った堅実なプレイで屋台骨を支えるってなスタイル。
 活動時期はグランジ華やかなりし頃だったので、それの尻馬に乗ってブレイクしてもおかしくないクオリティではあったのですが、やっぱ一連のシアトル勢とは似て非なる独特のいなたさがそれを邪魔してしまったのか・・・。あと、既存の音楽メディアへの露出が極端に少なかったのも災いしたのかしら。ただ、このバンドは意外な雑誌でよく見かけたんですよね。それは、「Thrasher」。
 当時読んでた人なら、多分1度や2度は目にしたはず。どうもskateシーンと交流があったようで、produceはバンドと連名で、あのLos Olvidados*3のBだったRay Stevens IIの名が。つーか、よくよくクレジットを眺めていくと、Wholly Smokkesの名も。Wholly Smokkesといえば、epitaph時代のDwarvesや、Blag DhaliaのソロでG弾いてたりした人ですよ?しかも本名はMike Foxといいまして、前述したLos OlvidadosのGだったワケで・・・。そんなskatecoreシーンの重鎮たちに寵愛されてたバンドなら、そりゃー「Thrasher」でも取り上げられるわな。
 さらに言うと、なんとマスタリングしてるのは、あのGeorge Hornですよ?70年代から現在に至るまで一線級で活動を続けてるお方でして、そのジャンルを問わない仕事っぷりは驚愕の一語に尽きます。ざっと挙げてみると、
The Greatful Dead
Herbie Hancock
Santana
喜多郎
MC Hammer
Racer X
Jawbreaker
Bob Dylan
Neurosis
Steel Pole Bath Tub
Tragedy*4
Brutal Truth
Fantomas
Sole
Sly & The Family Stone
 調べてるうちに楽しくなってしまって、ついつい大量に挙げちゃったけど、仕事柄致し方ないとはいえ、どメジャーからリアル・アンダーグランドまで分け隔て無くこなす無節操極まる仕事っぷりは壮絶。shrapnel勢*5Alternative Tentacles*6、Grayhaound*7、anticon一派とも親交が深いようだし・・・面白いなぁ。以前、Great Katのレビューの時にちょろっと取りあげたTom Coyne*8もそうだったけど、マスタリングする人ってジャンル不問って人が多いのかしら?プロデューサーやエンジニアの名前はチェックするけど、マスタリングまではチェックしてなかったので、今後は気をつけて見てみよう。
 ともあれ、何故かBart Thurber*9の名前もあったりして、このバンドを取り巻く人脈の充実っぷりは、目を見張るものがありますな。
 ちなみに、ワタクシがこのバンドの音源を買うに至った経緯は、前述したように「Thrasher」でライブ写真とかを見て、それがカッコ良かったっていうのもあったんだけど、このアルバムをリリースしてた"Big Money Inc"ってトコは、Arcwelder*10のシングルをリリースしてたトコでして、レーベルの審美眼には一目おいていたので、試してみた次第。
 個人的には、変わったバンド名も相まって印象に残ってるバンドなんですが、世間的にはどうなのかしら?今聴いても全然カッコ良いと思うので、機会があったら是非。まぁ、どうしようもなく地味だけどw。

*1:Derelictsほどpunkじゃない

*2:声はdanzig寄り、節回しはbiafra寄り。ちょみっとだけDan O'mahonyっぽくもあるかも

*3:80年代初頭のSan Jose Skatecoreの雄。Alternative Tentaclesからディスコグラフィが出てます

*4:勿論His Hero Is Goneも

*5:Cacophony、Tony MacAlpine、Joey Tafolla、Chastain・・・と枚挙に暇なし

*6:biafra先生のソロや、NOMEANSNOとのコラボ、Alice DonutやDead and Goneとか色々

*7:西海岸のHouseのレーベル

*8:Gang Greenから宇多田ヒカルまで手がけてるけど、得意分野はHip Hop / R&B系。手持ちのHip Hopのアルバムのクレジットを何枚かチェックすれば、多分名前が見つかるかと。Mordredの2ndも手がけてるという事実は、妙に味わい深いものがw

*9:Decibelsの"Bart Thurber Session"でお馴染みの方ですな

*10:ミネアポリスの隠れた素敵バンド。Helmet meets Jawboxと言ったら褒めすぎか