5/10 "デジャヴに見る平行世界"@小岩eM SEVEN/student A/恋はもうもく/emperor y/Brain Storm

emperor y

  KNさんに召喚されたので、またしても小岩行き。この日は"ハレ晴れユカイ"のリリース日だったんで、ダメモトでアキバに寄りたいトコだったのですが、仕事に手間取ったせいで小岩直行を余儀なくされる・・・。まぁ軒並み完売だったみたいなんで、アキバに寄らなくて正解っちゃ正解だったかも?
 18時過ぎにeM SEVENに着くと、リハ終わりだったせいか、出演バンドのメンバーの姿もまばらで、まったりモード。NMさんやKKRさん、KNさんらと談笑しつつ、開演を待つ。結局、15分押しの19時15分頃にスタート。
 トップのバンドはstudent aという4人組ギター・ロック・バンド。G&vox、G&vox、B、Dsという編成。シューゲイザー系のサウンドをベースに、今風なemo〜indie rockなテイストや激情系のエッセンスなんかも隠し味に用いた、真っ当なロック・サウンド。こういう真っ当なギター・ロックのライブを観るコトってまず無いんで、貴重貴重。
 ギターは、ディレイを効果的に用いてました。空間を意識した鳴らせ方ではなく、リフレインに重きをおいた使い方をしてまして、ちょっと新鮮。普段はディレイ=発振とかそういう使い方がメインだからねーw。
 2本あるギターの関係性/連動性も巧みで、どちらかが前に出る時は必ず片方が一歩引いてフォローに回り、時折同時に暴発ってな具合。欲を言えば、もう少し状況に応じてギターのトーンに変化をもたせると、もっと面白くなると思う。
 で、そんなオーソドックスなGに比べると、リズム隊は特徴的。まず、ベースが、このテの音にしては妙に音数が多く、うねってたのが印象的。UKギター・ロック系でこういうスタイルのベーシストがいるっていうのは、かなり稀なんじゃないかしら。バンド側もそこら辺は自覚してるようで、ベースを効果的に前に押し出したりして、凡百なギター・バンドとの差別化を図ってる模様。ドラムもなかなかタイトで、良いカンジ。
 ただ、voxがかなり普通にシューゲイザー風味だったのは、ちと勿体ないかも。激情パートのときは熱く歌い上げていたんで、そこら辺のテイストをもう少し盛り込んでみても良いかも?とは言え、あんまやり過ぎちゃうとありがちな激情系になっちゃうんで、匙加減は難しいところですが。
 楽曲は、どれもかなり良いカンジで、UK Guitar Pop好きの琴線に触れまくり。イントロがemoいカンジの曲が多いのですが、3曲目ぐらいに演った、アルペジオっぽい*1イントロの曲とかは、かなりのキラー・チューンなんじゃなかろうか。途中、シューゲイザー特有のwall of soundとかが展開したときは、パンク/HCでは味わえない、粒子の細かいホワイトノイズ風味なギター・ノイズを堪能出来まして、ワタクシご満悦でございましてよ?こういう、コントロールされたギター・ノイズっていうのも、やっぱ良いよね。
 思いもよらず良いバンドを知ることが出来ただけでも、小岩まで足を運んだ甲斐があったってモンです。ちなみに、もうじき音源がリリースされるそうなので、チェック入れます。
 二番手は、「恋はもうもく」。「いくら僕がぎゃーと叫んでも空は高い」のvox&gの方のソロ・プロジェクト。エレアコ&ギターの弾き語りスタイルなのですが、ディレイや歪み系のエフェクターなんかもアクセントとして使用。
 弾き語りとはいえ、楽曲のテクスチャーがオーセンティックなフォークとかとは違うので、レトロ感は無し。若干言葉数多めなリリックで、時に歌い、時に語りかけるように言葉を紡いでいく。相変わらずエモーショナルな歌唱は、なかなかの説得力。ちょっと文学的な香りのする歌詞の内容は好き嫌いが分かれるところでしょうが、サウンドにはハマってた気がするんで、アリかなぁ、と。
 合間合間で効果的に使うディレイも効いていて、インスト部分のヒネリもナイス。面白い感触のサウンドでした。
 三番手が、emperor y。ドラムにLIGHT'S OUTのメンバー、ミキサーにTRIKORONA他で御馴染みのノモトさん、そしてvox&カオスパッドにカキヌマさんという編成。ドラムキットをステージに向かって左側に配し、ステージ中央のアンプとアンプの狭間にノモトさん、右手にカキヌマさんという配置。
 どういう音を出すのか興味津々だったのですが、出てきた音は、かなり意外。轟音ノイズとかではなく、各音がしっかり認識出来る、整理された音。
 まず、一番目立ってたのがドラム。躍動感溢るる「ロック」としか言いようの無いパワフルなドラミングでサウンドを牽引。叩き出していたビートは、アドリブでランダムな要素を交えつつも、かなり分かり易い明快なビート*2をリフレインさせるスタイル。
 カキヌマさんは、声主体とカオスパッド主体という二つのスタイルで音を出してまして、声の場合はエフェクトをかけた声*3でまくしたてるように声を紡ぐ。その声とドラムがリズミカルに呼応しあい、昇華していく瞬間が何度かあって、そのときのグルーヴ感にはゾクゾクしましたね。
 また、カオスパッドをメインで使うときは、マイクを使わず、本体/アンプから発生するノイズをエフェクトさせつつ、プラグの抜き差しなどで微妙にトーンを調整しつつ、ときにヴォリュームのon/offなども駆使しながら、リズミカルに音を絡ませてまして、声メインのときとの明確な差別化を図ってたのが印象的。
 ノモトさんは、各種エフェクターをループさせながら、エンジン音みたいなビートを作り上げ、それをメインに音を展開。ただ、これがどうにも上手く他の面々の音と絡んでおらず、ちょっと手こずってた印象が否めない。途中からはフィードバック主体の音に切り替え、ようやくハマってきましたが、全体的には苦戦してた気が。
 ただ、途中何度かエンジン音みたいな音が上手く他の音と絡んだ瞬間がありまして、そのときの全体の音のバランスが、かなり素晴らしかったのですよ。たしかに、フィードバックのほうが絡め易く、パっと聴きには良さげに聴こえるんですが、なんつーか「読める」音になっちゃうんですよね。意外性が無いっつーか。その点、エンジン音みたいな音が上手く絡み合ったときは、想像してなった感触の音色が生じてまして、これがかなりカッコ良かった!音階楽器を使ってないんだけど、良い意味でのキャッチーさが醸し出されていまして、心地良い。
 バンドの基本的なアイディアが面白いので、出てくる音も、時に聴き手のイマジネーションを上回るものが飛び出してきたせいもあって、非常に刺激的なサウンドでした。が、改善点も多々。例えば、音のトーン。カキヌマさんのカオスパッドの音は、前述したように大別して2つの音色を中心とした音しか出せておらず、ちょっと物足らなさを禁じえない。また、ノモトさんの音も暗中模索気味で、「これぞ!」という基本的な音が構築出来なかった気が。ドラムは、良くも悪くもロックしてたのですが、基本的にアクセルベタ踏みなカンジで、もう少し緩急とかの意識も欲しかったし、ロック以外のビートも織り込んで欲しかったかも。
 とは言え、準備期間の短さ*4を鑑みれば、十二分に及第点で、観に行った甲斐があったというもの。非常に可能性を秘めたユニットだと思うんで、是非今後も継続して活動していって欲しいし、絶対また観たい/聴きたいですね!
 emperor y終了後は、例によってロビーで談笑してたので、トリのバンドは未見。
 ここ数年は保守的な音楽ばっかり聴いてるんだけど、たまにはこういう刺激的で好奇心をくすぐられる音を聴かないとなぁ・・・。こういう刺激を、自分の音にも反映させたいものです。

*1:厳密にはアルペジオじゃないんだろうけど、そういうニュアンスの演奏

*2:あくまでもロックがベースっていうのがポイント

*3:かなりのランダム音なので、明快な言語にはなっていない

*4:日曜に急遽ライブが決まったとかw