• 熾鸞堂「ENCORE WATT!!」

  今年の夏コミでリリースされた、商業原稿再録本。とはいえ、個人的に商業エロマンガってあんま読まないんで、どの雑誌(あるいはアンソロジー)が初出なのかは不明です。すまん。で、さすがに商業原稿なだけあって、いつもよか描き込みが多め。背景があったり空間処理のトーンがあったりと細々手が入っているのですが、個人的な趣味から言えば同人誌特有の削ぎ落とした作画が好きなんで(shiranさんに限らず、全般的に)こういう商業原稿特有のムダな作画効果っていうのは、あんま好きじゃない。なんつーか、気が散るんだよね。音楽とかも同様なんだけど、基本的に必要最低限の音だけ鳴ってれば充分楽しめると思うのですよ。何度か書いてますが「引き算」の感覚に魅力を感じるのです。削ぎ落とすにしても、何を描いて(鳴らして)何を削ぎ落とすのか。そこら辺のセンスにこそ描き手や演奏者の本質が滲み出ると思っているんですがね。無論、逆もまた然りで、足す場合でも同様に着眼点があるとは思いますし、それはそれで面白くはあるのですが、メジャー系の作品っていうのは「足し算」基本みたいなトコありますからねぇ。ま、図らずも俺の場合は音楽にしろ同人誌にしろ「引き算」が共通して魅力を覚える要素であったりするのです。
 それはさておき、言うまでも無くそんなのは俺の個人的な趣味なワケで、客観的に見れば手がかけられてる方が良いに決まってるワケで。ですから、非常に安定した作画である、と言えましょう。今回は2本収録されてますが、どちらも設定とかにちょみっとヒネリが加えられてます。一つは神社を設定として使ってるんですが、ちゃんとその設定を使って(強引ですが)話を組み立てています。バイクやスガキヤなどのshiranさん特有のテイストなんかもしっかり盛り込んでるし、ねちっこいエロ描写も健在。
 もう一本は擬似近親相姦モノ(元は普通の近親相姦だったそうな。これだから商業誌は・・・)。義姉×弟というティピカルな設定ですが、包容力のある姉と甘えたがりな弟という設定がなかなか良し。ただ、こういう設定って「そうなるきっかけ」が一番魅力的なシチュなワケで、ハナっから結果以降の過程を見せられても、ちょっとカタルシスに欠ける感は否めません。でも、それも商業誌というフィールドを鑑みれば已む無しと言ったトコでしょうか。
 shiranさんは基本的には商業誌に向いてるタイプだと思うんですが、あんま短編向きって作風じゃないんで、連載である程度まとまったスパンで描いた方が、良い作品描けると思うんですけどね。
 ものすごくどうでもいいんですが、今回の本のロゴを見たときにCARCASSのロゴを思い起こしたのは俺だけでしょうかw。
HP>http://www.tcp-ip.or.jp/~zoologie/shirando.html
ex.>id:PIG-M:20030924、id:PIG-M:20031011、id:PIG-M:20040118、id:PIG-M:20040323、id:PIG-M:20040414、id:PIG-M:20040627