80年代後期からCaliforniaをベースに活動を続けるNO USE FOR A NAMEの、1992年産の2nd。今でこそキャッチーなメロディを武器に、FAT WRECKの看板バンドとして君臨してますが、個人的にはFAT移籍前の音源の方が思い入れがあるのですよ。初めてN.U.F.A.N.の音源を買ったのは1990年リリースの1st "Incognito"だったのですが、きっかけとなったのは、やはりex.STIKKYのChris Dodgeが在籍(結成時はGですが、初期の2枚のシングルではTony SlyがGで、Chris Dodgeがvox。ちなみに、2ndシングルはSlap A Hamからのリリースでした。#3。)してるっていう一点だったりw。88年頃からLOOKOUT系をチェックするようになってて、その流れでSTIKKYも知っていたのでよ。で、MRRとかでN.U.F.A.N.のreviewとかも目にしてたんで、喜び勇んで買ったのですが(たしかEDISONで買ったんだよな。今でこそ目も当てられない様な惨状となってるEDISONですが、90年代初頭頃まではマニア御用達な良い店だったのです(2Fがあった頃までだね)。COCOBATの坂本さんとかも働いてたしねw)・・・なんとChrisがまた脱退してたのねw(ちなみに、2度目w。最初のシングルをリリース前にも、一度脱退してます)うそーんw。おかげで、買った当初はあんま聴かなかったのです。内容は悪くないんだけどね。
 そんなカンジで凹んでると、なんとあっさりChris Dodgeがまたまた出戻ったとの話が聞こえてきましてw(1991年には戻っていた。でも、再加入後はvoxではなくRhythm Guitar)。単純にSlap A Hamが忙しかったのかしら。事情はさておき、再度4人組となってリリースされたこの2ndは、1stを遥かに凌ぐ素晴らしい内容だったのです。
 まず、なにがびっくりってTony Slyのvoxが劇的に上手くなったコト。声に深みが出て、単純に良い声だなー、と。でもって、楽曲のクオリティもググっとアップ。Chrisが戻ってきたことによって、良い意味でのハードさが注入され(ライナーの写真で、一人笑顔でプレイしてるんですが、しれっとRELAPSEのTシャツ着てるしなーw)持ち前の翳りを帯びたメロディと相まって、当時の百花繚乱な西海岸シーンの中にあっても異質な存在感を放ってましたね。特にギター・ワークの力強さと、硬軟織り交ぜたコーラスはかなり魅力的でした。ギターに関しては、かなりクランチの効いたリフを刻んでまして、そのドライヴ感は間違いなくハードコアでしたね。特筆すべきはM-8の"Watching"。不穏なギターの鳴りに絡みつくアコギ。そこからへヴィなリフ、そしてクランチーな刻みで味付けしてから、コーラス・ワークと共に疾走するイントロは、今聴いても余裕で鳥肌が立つカッコ良さ!この当時、こんな要素をメロディック系に持ち込んでたバンドなんてちょっと思いつかない。ここら辺はChrisのセンスだろうなぁ。
 一方のコーラス・ワーク。これまた工夫が施されてまして、流麗にメロディを彩るハーモニーを聴かせたかと思えば、アグレッシヴに男らしくw吼えるパターンなんかもあったりして、通り一遍なスタイルではない(M-2の"Thorn in My Side"なんかが分かり易い)。こういうセンスっていうのはFAT移籍以降は影を潜めるので(単純にハードコアな要素が無くなってしまったんで、使い道がないという言い方も可能だが)やはりChrisの味付けだったのかな?
 この頃のN.U.F.A.N.ってメロディはあくまでもキャッチーなんだけど、前述したようにギターやコーラスなんかのおかげで、全然甘くないんだよね。個人的には、そのバランスに萌えるのですよw。この後にリリースされた"Death Doesn't Care"CD.(4曲入りなんで、実質シングル。何故か公式HPに載ってないぞ)は1991年のliveとアルバムの先行シングル(でも、リリースはアルバムと同時期だった気が。カタログNoもNRA33CDだし)だったせいもあり、Melodic Hardcoreの矜持を見せつけてくれたのですが、FAT移籍後の音源ではよりメロディの要素が高まり、ザラついたテイストもスポイルされ、普通にポップでキャッチーなサウンドへと変貌を遂げたのでした。
 誤解してほしくないんだけど、俺は別にFAT移籍以降のN.U.F.A.N.を聴かなくなったワケじゃない。4thの"Leche Con Carne!"の疾走感とか大好きだし、最近の聴かせる方向へのシフトっていうのも納得してるし。今回言いたかったのは、今はあんな風にポップだけど、初期の頃は粉う方なく"Melodic Hardcore"だったのですよっつーコトです。未聴の方は、是非一度お試しあれ。