家に無事到着するも、エレヴェーターにはサイズ的に載せられなかったので、人力で3階の俺の部屋まで運びました。父用の布団を敷き、そこに亡骸を横たえさせます。すると、業者の方が手を組んだ形(お祈りするときの様な)に固定させ、包帯状のもので固定させました。そして、手早くドライアイスを身体の周辺に配置させ、そこに毛布を敷いてひとまずは終了。ドライアイスを用いるなんて知らなかったよ。
 それでようやく作業は済んだのですが、こっから先がまた難題山積。本来ならすぐにでも業者さんとお葬式について話を詰めていきたいところなのですが、ここで問題となったのが、宗教。以前父からちらっと聞いた話では、父の両親は敬虔なクリスチャンだったそうで。だから仏式ではなくキリスト教形式が良いのかな?的な事を業者さんに相談したら、にわかに業者さんの顔が曇りまして。そこで訊かれたのが、父が洗礼を受けているかどうか、という事。そんな事俺が知る由も無いのですが、その結果如何によっては相当面倒な事になる、との事で。もしも洗礼を受けていたならば、その洗礼を受けた先の教会にお伺いをたて、おそらくはその教会の系列によって式をあげなければならない、と。その場合、自分達(業者)の出番はここまでだ、と。
 結局、洗礼云々について知っているのは大阪在住の父の姉だけとの結論に至ったのですが、その伯母は現在こちらに向かってる最中で、無論携帯など持ってるはずもなく、現時点で打つ手が無くなってしまいました。やむなく、業者さんには一端引きとっていただき、詳細が決まり次第連絡をすることに。
 伯母が到着するまでの間、とりあえず関係各位に連絡しようと思ったのですが、これがまた困難を極める作業でして。まずは会社の方に携帯から重要と思われる相手をリスト・アップして連絡してもらい、残りの面々で年賀葉書や同窓会名簿などを使って、中学・高校・大学各年代の方に連絡をとりました。正直、父の交友関係なんて知る由も無かったので、かなりてこずりましたね。
 そうこうしてるうちに、伯母が到着。挨拶もそこそこに洗礼の件を確認したのですが、幸い父は洗礼は受けていなかった事が判明。葬儀の形式に関しても、そこまでこだわりは無いとの旨を確認したので、早速業者さんに連絡。しかし、なかなか事は上手く運びません。次の懸案は、会場。一応、以前ウチの団地の集会所で葬式を行っていたのを見たことがあったのですが、如何せん今は(5/1)G.W.のど真ん中。集会所が押さえられる可能性は極めて低いので、別の会場を探してもらう事にして、今日のところは一端終了。明日午前10時に集合ということにして、解散と相成りました。
 夕方6時頃、父の亡骸と俺以外誰もいなくなったところで、母に電話しました。午前中から何度か連絡したんですが、生憎と遠出してまして(携帯の電源も切っていた)なかなか連絡がとれませんでした。母に事の一部始終を報告し、慰めの言葉をかけられたときに、ちょっと泣けてきました。心配をかけたくなかったので、なんとか誤魔化してそそくさと電話を切ったのですが、後で母に訊くと、このときはかなり心配したそうです。
 緊張の糸が切れてしまったのか、しばしの間泣きました。別に悲しいとか思ってはいないつもりだったのですが、それでも涙がぽろぽろと零れ落ちます。ひとしきり泣いたら、不思議なものでちょっと気分がすっとしました。朝からろくすっぽ何も食べてなかったんですが、どうにも食欲だけはわかなかったんで、ひとっ風呂浴びた後、近所迷惑だったでしょうが(夜もふけてたし)爆音でBAD BRAINSやMINOR THREAT、SCREAMなんかを聴き続けます。面白いもので、何百回と聴いてきたにも関わらず、いつもより鮮明に聴こえ、より心の奥に沁みいる感じがしました。気合が入るとかそんな単純な話じゃないんですが、それでも明日への精神的な活力の源となったのは、間違いありません。こんなどん底な気分になっても、それでも俺はハードコアを求め、ハードコアは俺に応えてくれた。この先どんな事があろうとも、どんなに年をとろうとも、俺は一生ハードコアを聴き続けるんだろうなって確信しました。
 さすがに色々あり過ぎた日だったんで、AM1:00前には床につきました。実に二十何年ぶりかに、父と並んで眠りについたのでした。