2/2 "鋭角な未来 vol.1"@池袋Manhole / Encroached / Disdomestic Violence / Deathlike Silence / Provocate / Barbatos / illya

 土曜は池袋にライブを観に行ってきましたよ。
 ちょろっととらで同人誌とか漁りたい気持ちもあったんですが、荷物を抱えてライブハウスに行くのは避けたかったので、覚悟を決めるべく、家を出る時点でカバンを放棄し、手ぶらで一路池袋へ。池袋は幾度となく足を運んでいる街ではあるのですが、この日はちょっと勝手が違う。何故なら、この日の会場であるManholeは西口〜メトロポリタン口方面に位置してるからでして。ワタクシが普段徘徊してるのは東口方面のみ。どれくらい西口方面に疎いかというと「メトロポリタン口って何?」ってなレベルw。ともあれ、事前に調べたところによると、メトロポリタン口から出ると向かいにメガネドラッグがあって、それを目印に・・・ってなカンジだったので、生涯初となるメトロポリタン口から外に出まして件のメガネドラッグを探そうとしたのですが・・・メトロポリタン口って階層にすると2Fでして、件のメガネ屋は当然1F=地上に位置してるワケで、のっけから戸惑いまくり。周囲をざっと見渡しても地上へと至るルートが見当たらなかったので、改札横に威圧的にそびえ建っている東武だかメトロポリタンプラザだか知らん建造物に侵入し、そこから地上へと至るルートを確保するコトに。
 ハイソな空気感に萎縮しつつも辛うじて地上へと脱出する経路が見えたので、逃げるように外へ。すると、件のメガネドラッグを無事捕捉することが出来たので、安堵しつつ次なるランドマークであるコンビニを探していると、見知った面々が集っているのを発見したので無事合流した次第。そこで暫しダベってからManholeに移動し、入場。フロアの中はいつもの顔ぶれと見知らぬ顔ぶれが半々ってなカンジで、なかなかの集客。予想以上の動員に感心してるうちに、トップのEncroachedが登場。。昨年5月のDrive@八王子以来久しぶりにライブを観たのですが、確かな成長の跡が窺える素晴らしいステージを披露してくれました。基本路線は従来どおりのRaging HCスタイルなのですが、メンバーの成長に伴い、既存曲のテイストが向上。特に耳を惹いたのは、モチヅキさんのギター・ワーク。以前よりもロッキンで味わい深いフレーズを織り込むようになったので、楽曲の深みが増した印象。また、リズム隊の表現力も増しており、従来の突進力はそのままに、しかし個々の楽曲の良さが一層際立つような演奏力を手に入れ、勢いは増すばかり。こういった要素の下作られた新曲の充実っぷりも素晴らしく、いよいよもって脂が乗ってきたんじゃないかと。大枠では完全に「Hardcore」なんだけど、ひと口に「〜風」と言い切れないサウンドであるが故、過小評価されてる感は否めないですが、HCが好きな人なら一度観たら絶対気に入ると思うんだけどね。叩き上げのライブ・バンドの凄みを是非味わっていただきたい。
 二番手はDisdomestic Violence。名前くらいしか知らないバンドだったんで様子見ってカンジで構えてたんですが、のっけから燭台っぽい体のスタンドに線香を備え付けてあるステージ上にvoxがフロアに背を向けひざまづき、両手を広げて何かに祈りを捧げるような仕草をする、というシークエンスが展開され、呆気にとられる。そんな呪術的な雰囲気を切り裂いたのがMetal Crust全開なリフ。基本はちょいメタル寄りなMetal Crustなんですが、通り一遍なサウンドには聴こえない。何故かというと、件のvoxの奔放な歌唱方法がサウンドの表情をコロコロと変えてくれてるからでして。HC然とした咆哮からシアトリカル気味な浮遊する唱法まで実に多彩な表現を駆使してくれまして、なんともひとすじ縄ではいかない印象。でも、そこが実に面白い。かなりのインパクトでございました。
 お次は、Deathlike Silence。一応Black Metalの範疇に入るんでしょうが、ちゃんと速さを感じるブラスト・ビートだったり、voxのシダくんの獰猛な絶叫や咆哮が所謂デス声よりも絶叫HCとかのそれに近いせいもあり、Death MetalやBlack Metalを積極的に聴くほうじゃないワタクシでも安心して聴けるし楽しめたりするのですよ。この日のDeathlikeも、当然大いに楽しんだ次第。物悲しくemoい旋律から一気にブラスト&高速クランチ・パートに雪崩れ込むカタルシスは、いつ聴いても最高。タイトな演奏をバックに完全にイっちゃった表情で咆哮しまくるシダくんのテンションに呼応し、フロアも豪ノリで応酬。そのノリは完全にHCなノリかもしれないけど、ちゃんとヒステリックなギター・ソロのパートになると、皆、拳じゃなくてメロイック・サインで煽ったりしてるトコなんかは「分かってらっしゃる」感が滲み出てて面白かったなぁw。
 後半戦は富山から参戦のProvacateが口火を切る。vox、B、Dsというちょっと変わったトリオ編成なんですが、Bがベース・アンプとギター・アンプの2台を駆使し、エフェクトの有無とかも細かく切り替えたりしてるので音的にはGが入ってるノイジーなcrustと変わらぬ印象。微妙に薄い音も、また好し。しかも、そのBの人はかなりの頻度でツイン・ヴォーカル気味に唄も歌ってたので、まさに八面六臂の大活躍。基本はcrustなんですが、首都圏のバンドとは違い、地方バンド特有の*1独自性を醸しだしていて、それが印象的でもあり、面白くもあり。どんなに情報網が発達し、良い意味でも悪い意味でも地域による情報の格差が減りつつある今の時代にあっても、こういった泥臭い音楽の世界では、まだまだ地域毎に特色が生まれる余地が残されているのだなぁ・・・と、ちょっと感慨深くもあったり。
 トリ前は、BarbatosAbigailのメンバーがやってるサイド・プロジェクトだそうで。この日はツイン・ギターの片割れにLifeの二ツ木氏を迎えてのステージだったため、なんとなくそっちサイドに客が集まってたようなw。ともあれ、いざライブが始まると、これがもう完全にシンプルで猪突猛進型のThrash Metalで最高。それと、絶対Motorheadの影響もあるよね。つーか、City IndianやInepsyなんかにも通ずる方法論をThrash Metalで表現してるってカンジかしら。
 このバンド、Tankardの1stばりに曲が短いのですが、メタル故に曲が短くてもギター・ソロなんかがしっかり組み込まれておりまして。しかもギタリストのタイプが異なるので、味わいのあるフレーズやフラッシーなフレーズが交錯して、聴かせる聴かせる。これで延々弾かれちゃうと悪い意味でメタル臭くなってしまうのですが*2そこはそれ、節度をわきまえてるっつーかなんつーかw。リズム隊は勿論タイトで、特にベースの方の佇まいの渋さにシビれまくり。どっしり構えて超然とリッケンを掻き鳴らす姿は、神々しくすらある。
 曲によってはメタル過ぎたせいかフロアのノリが若干悪くなる瞬間もありましたが、個人的には大いに楽しませていただきました。

 そして、この日の企画主にしてトリのillyaが登場。のっけから弦楽器隊の音が揃って止まるというプチ・ハプニングがありましたが、それのせいかどうかは定かじゃないけど、初手からブチ切れテンションでかっとばす。明らかに演奏は粗いんだけど、そんな瑣末なことなど全く気にならない直情径行っぷりにフロアも一気に沸点を向かえ、豪ノリでしっちゃかめっちゃか。演奏をきっちりこなした上で情念をブチ撒けられるのが理想ではあれど、それが出来ない時は選択しなければならない。ソツなく、ミスの少ない演奏を目指すか、演奏の出来は二の次で、玉砕覚悟で全力を尽くすか。Punk / HCの世界に限って言えば、どちらがbetterな選択かは言うまでも無いでしょう。
 illyaの場合は結構演奏へのこだわりがある分、どうしてもミスの少ない方向をチョイスするきらいが感じられてたんだけど、この日は珍しく勢いを重視。その結果が上記のような豪ノリを巻き起こしたワケなんで、今後も精進の精神は忘れずに、しかしライブはライブで割り切って魅せていただきたいものです。 
 この日のillyaは、持てる力の全てか、それ以上のものを魅せつけてくれたと思う。思いの丈をブチ撒けるように全身全霊で歌うチフスくん、いつもはクールに構えてるエレくんもガンガン客を煽って魅せることを意識してたし、フレーズの派手さとは裏腹にステージ上だと普段は控えめなルナティックくんも珍しく前に出て煽ってみせた。基本省エネ・スタイルで決め所だけガツンとカマすアントンくんも、この日は初手からパワフルで熱く、前のめり気味なドラミングを披露。全員が一丸となって全力を振り絞ったが故にフロアも呼応したんじゃないかしら。盛り上がってたのは身内だけじゃなかったし。
 メンバーのテンパり具合はMCとかで思いっきり露呈してたけど、言いたかった事、伝えたかった事、そしてこの企画に籠めた思いなんかは、ちゃんと客に伝わったんじゃないかしら。けして統一されたラインナップではない企画だったにも関わらず目立った客の増減は無かったし、何より、終演後の客の満足げな表情の数々が、その証ではないかと。出演陣が一切手を抜かなかったからこそ客も満足したんだけど、出演陣をその気にさせたのは、他ならぬillya の面々の情熱の賜物だったんじゃないかしら?初企画だし、チャレンジャブルなラインナップだしで不安も大きかったと思うけど、とても素晴らしい企画だったし、実に楽しかった。本当に足を運んで良かったよ。でも、改善の余地はまだまだあると思うんで、これで満足せず、更なる企画を企てて、また楽しませて欲しいものです。

 終演後は、破顔一笑するillyaの面々に軽く挨拶をしてからフロアを後にし、客組は近場でメシを食ってから帰路に着いたのでした。

*1:Triokorona / Coffinsのコレエダさんは「大阪っぽい」と評してました

*2:個人的にはそれでも構わないんだけど