• TRIKORONA "The Marriage to Gorilla EP"CD-R.

 ex.SNATCHER、CURTAINRAIL等のメンバーが在籍する4人組の1st demo。liveは2度ほど観てまして、かなりのポテンシャルを秘めているバンドだというコトは重々承知していたのですが、スタジオ音源のほうでもなかなかやってくれてます。元々楽曲の起伏が激しい上に音の鳴らせ方やテクスチャーにも気を配っているという印象はliveからも感じていたのですが、そこら辺の意識の高さがこの音源には漲っています。まず耳を引くのは音の鳴らせ方。中音域にガシっとしたサウンドの核を構築し、そこにエネルギーを集中。その周囲を様々なパートの音が縦横無尽に暴れまくっているのですが、やはりサウンドの中核を成しているのはギターか。ザラついた荒めの粒子の音でリフを鳴らしつつ、エフェクトを駆使した変化に富んだ音色でもって印象的なフレーズや空間を埋めるノイズを紡ぎだし、さらには位相などにも変化を加えており、このテのバンドにしては珍しいぐらい「音」そのもに対する拘りを感じさせてくれます。
 一方、リズム隊は音の鳴らせ方こそシンプルですが*1演ってるコトは尋常じゃありません。複雑なリズムをしっかり制御し、かつ楽曲に表情を加えており、見事。voxもギターと並んで様々なエフェクトが施されており、絶叫メインなれど変化があって面白い。
 楽曲は、テクスチャーは複雑なのですが、そういったバンドにありがちな頭でっかちな印象はあまり感じません。その理由は、サウンドからきちんと肉体性が感じられ、ハードコアとしての矜持を見せつけているコト。また、ただ単に複雑なだけではなく、展開そのものがキャッチーだったりもするので、意外と聴き易いんじゃないかと。
 M-1のイントロとかで若干演奏が固い感もあるし、音の細部のディテールに若干物足りなさ*2を感じたりとかもあるのですが、冷静に考えたらコレってdemoなんだよね。はっきり言ってdemoとしての水準の遥か上を行くクオリティですんで、コレが普通に1stシングルとか言っても誰も文句言わないと思う。かなり引き出しの多いバンドなんで、それを上手くサウンドに反映させていく作業っていうのは面白いだろうけど、同時にしんどそうでもある。一歩間違えれば引き出しの多さが仇になりかねないので、常にそこら辺のセンスが問われることになりそうかな?ただ、根底にはハードコアの血脈が脈々と息づいているので、その前途は明るいだろう。
 ともあれ、まずはこの音源を入手し*3、liveに足を運んで観て欲しい。どっちか片方に触れただけでは、このバンドの真価は分からないだろう。短いながらも聴き応えのある、ナイスな一枚。ヘッドフォン着用推奨。
ex.>id:PIG-M:20040725、id:PIG-M:20040922

*1:それ故にギターの音が映える

*2:例えば、M-4でのノイズの音とかは、もっと音の粒子を細かくしたほうが耳障りでカッコ良いんじゃないか、とか

*3:ALLMANやBASE、BOY等で入手可能