• SLAPSHOT "Sudden Death Overtime"CD.(TAANG! RECORDS/T-40)

 Boston HC〜Straight Edgeシーンの徒花、Choke(a.k.a.Jack Kelly)先生率いるSLAPSHOTの、1990年産2nd。世間的にSLAPSHOTのベストっつーと1986年リリースの"Back on The Map"12"か1988年リリースの1st "Step on It"なワケで、俺としてもその意見に依存はなかったりするのですよ。じゃあなんで敢えてこのアルバムを紹介するのかっていうと、このアルバムって かなり過小評価されてる気がするのよ。つーか、SLAPSHOT自体、あんま評価されてない気が。いやいやいやいや、これがなかなかカッコ良いんですよ、ダンナ?
 SLAPSHOTは、ex.NEGATIVE FX*1、LAST LIGHTS*2のChokeが中心となって1985年に結成。他のメンバーはBostonのLocal Band、TERMINALLY ILLのメンバーで、GのSteve RisteenとDsのMark McKayが参加。さらに、この音源のリリース前にBのChris Lauriaも加入*3。メンバー5人中3人がex.TERMINALLY ILLという事態にw。ちなみに、件のTERMINALLY ILLは正式な音源はリリースされてないという、ホントにLocalなバンドだったのねん。結成当初のBは、ex.DYS(Department of Youth Services)のJonathan Anastas。彼が脱退し、ex.DEATHWISH*4のJordan Woodが後任に。その後、件のex.SSDのJamie加入時にBからGに転向し、以降Steveとのツイン・ギターでサウンドの中核を成します。そのJamieが脱退して*5、Chrisが加入*6
 このアルバムではChoke、Steve、Jordan、Chris、Markの5人編成なんですが、意外なコトに数あるSLAPSHOTのアルバムで、オフィシャル音源で5人編成なのってこのアルバムだけなんだよね*7。そういった観点から見ても、このアルバムの特異性が窺えるかと。
 そのSLAPSHOTのサウンドなんですが、基本はミッド・テンポを主体としたドライヴィング・ハードコア・パンク。Chokeの元祖「塩辛い」voxがアジりまくり、シンプル*8でタイトなバックが演奏を引き締めます。随所で男くさい合唱コーラスが挿し込みまくり、Jockcoreも真っ青な漢っぷり。でも、意外とヘヴィネスとかとは無縁だったりするトコが面白い。これは初期から一貫していて、SLAPSHOTのオリジナリティとも言える要素。1st "Step on It"辺りからはかなりOiの要素が色濃く出てきまして*9サウンドの漢汁度も飛躍的にアップ。暑苦しいことこの上ないサウンドにプラスして、全編に吹きすさぶ偏った思想やマチズモの嵐も凄まじく*10正直、歌詞や思想的には全くもって好きにはなれない*11。駄菓子菓子、サウンドだけに焦点を絞れば、かなりカッコ良い!
 "Sudden Death〜"ではツイン・ギター化により、従来の楽曲からも見え隠れしていたハードロックなテイストが前面に押し出され、Oiベースのミッドな楽曲にざっくりしたメタル・リフと弾きまくりなギターのフレーズが加味されるという、独自のサウンド様式を確立。Chokeのvoxも表現力が増し、もはや如何ともし難い領域に突入。先行リリースの"Fire Walker"でその変貌ぶりを事前に知っていたとはいえ、M-1 "What's At Stake"のインパクトにはのけぞりましたよw。でも、これだけ過剰な要素を揃えているにもかかわらず、あくまでも音作りはシンプルそのもの。だから面白いし、聴けるんだよね。これで音が重かったら、絶対聴いてないと思う。そこら辺のバランス感覚が、なんかにくめないんだよなぁw。
 このバンドのフロント・マンであるChoke先生は、数々の逸話を有するお騒がせ男としても知られている。一番有名なトコでは、Straight Edgeを標榜しているにも関わらず「liveの後には、ぶ厚いステーキを喰う」といった一連の発言だろう。この発言をした当時は、NYを中心とした80年代後期の第二次SxExムーヴメント真っ盛りの頃で、当時のSxExはいわゆる"Don't Smoke,Don't Drink,Don't Fuck"なオリジナルSxExの思想をさらに推し進め、菜食主義もSxExのエレメントの一つとして捕らえるようになっていた。当然Chokeの発言は批判の対象になるワケだが、そんな批判などどこ吹く風。全く気にせず、周囲の神経を逆撫でするような言動を繰り返していたっていう姿勢は、個人的には大いに評価したいところ。あんま知られてないんだけど、SICK OF IT ALLが初来日した際、それを知ったChokeが「あんな奴等を呼ぶぐらいなら、なんで俺たちを日本に呼ばないんだ」と本気で怒ったとかw。なんつーか、愛すべき人だよねw。
 そのサウンドの地味さといなたいルックスwのせいか、なんか日本では人気が皆無っぽい印象ですが*12かなりカッコ良いと思うんだけどなぁ・・・。個人的にはPOISON IDEA "Feel The Darkness"、FUGAZI "Repeater"、BAD REIGION "Against The Grain"なんかと共に、1990年当時、よく聴いていたアルバムです。とりあえずSLAPSHOTは初期音源を集めた"The CD"(TAANG! RECORDS/28CD)と"Sudden Death〜"を聴いとけば問題ないんでw、是非一度お試しあれ。あったま悪くてカッコ良いぞw。

*1:DEEP WOUNDやSIEGEと共に評価されるべき、元祖Fastcore。そのうちreviewするです

*2:NEGATIVE FX解散後にChokeがやっていたバンド。現在はNEGATIVE FXの音源とまとめてCD化されてます

*3:"Sudden Death〜"のクレジットでは、ex.SOCIETY SYSTEM DECONTROL(a.k.a.SSD)のJamie Sciarappaの名が載ってますが、実際にはChrisが弾いてます

*4:知る人ぞ知る、80年代Boston HCの埋もれた名バンド。唯一の7"はLOST & FOUNDが何度かブートで音源化してるんで、探せば入手可能かと。オリジナルは見たコトないなぁ・・・

*5:L.A.に引越した為

*6:ちなみに、CDにはボーナス・トラックとして"Fire Walker" 7"に収録されていた"Chip on My Shoulder"と"Moment of Truth"のliveテイクが収録されてるんですが、ここでBを弾いてるのはJamie。しかも、live音源と言いつつも実はスタジオで収録されてまして、ガヤの声とかはメンバーの声だったりしますw

*7:bootのlive盤はあるけど

*8:これ、ポイント

*9:実際、ChokeはPATRIOT RECORDSというOiレーベルを主宰していたし、Jordan、Markと共にSTARS & STRIPESというOiバンドを結成し、アルバムをリリースしたりもしてたのです。このアルバムは数年前にCD化されました

*10:往年の「ファミコン・ウォーズ」のCMみたいな曲もあるぞ

*11:別にNazi Punksなバンドじゃないのよ。念のため

*12:あんまSLAPSHOT好きって人に会ったコトないぞw