• 異空館「ひらがな。」「ひらがな。2」

 依玖宇閑(aka夕珂あんり)さんの創作系サークル。装丁とかがぽいんで創作系メインの方かと思ったんですが、どっちかというと別名義でのゲーム系がメインの様です。どちらも過去の記憶や思い出をテーマにした女のコたちの何気ない日常を切り取った作品で、郷愁を誘います。挿入されるエピソードは普遍的で、誰にでもそういった経験があるであろうものが多いんですが、それ故に感情移入しちゃったり。ラストも綺麗にまとめられていて、ちょっといい気分になれる作品です。こういったこじんまりとした作品は良いですね。蛇足ですが、俺が買った本はページが抜けてたらしく、売り子のお姉さんが抜けたページを届けに追いかけて来てくれました。その節はお世話になりましたw。

  • N-28「SOME LIKE IT HOT」「となりのさんぽ道」

 未幡さんの個人サークルのコピー誌。「Some〜」は5月リリース(前回のコミティアかな?)の恋愛モノ。日常のちょっとしたすれ違いを軸にしたお話。若干小洒落たエッセンスを散りばめ過ぎたきらいはありますが、綺麗にまとめてます。結構イラストチックな見せゴマが多かったり画面の処理(トーンとか)が面白いトコがあったりでなかなか。「となり〜」が新刊。こちらはいろんな人がいろんなトコで繋がってるってなテーマを扱ったオムニバスっぽい内容。駅から始まり駅で終わる、といった構成もナイス。この作品では一転してトーンを一切使わず、すっきりした作画。内容的にも空間や余白があって、行間を読ませるスタイル。どっちの手法にも持ち味が感じられるんで、今後どうしていくのかが楽しみです。

  • 絵夢「日記マンガ」「日記マンガ.EP STORM」「夏よこプール」

 絵夢原洵一さんの個人サークルの新刊&旧刊。先日の日記でも書きましたが、5月のコミティアで読んで以来すっかりお気に入りの作家さんなんですが、今回は新刊の他に各種入手出来てほくほく。メインのシリーズである日記マンガは大阪は高槻を舞台にしたブレイカーたちの日々を綴った物語。「日記マンガ」はシリーズ1作目。お披露目作っていうのをさっぴいても、いささか詰め込み過ぎな感は否めませんが、今に通ずるテイストはこの頃から(って言ってもリリースは昨年の10月末なのね)随所に溢れています。内容はチカ&モカの女のコペアがTEAM UHHというブレイカーたちとバトルする、といった内容でメイン・キャラ達が出会うお話。全体的に今よりもラフなeast bayテイストなんですが、描きたいことがありすぎるってなカンジの、いいイミでの焦燥感には好感が持てます。
 この次のリリースが件の5月のコミティアで購入した作品なんですが、この際だからここで一緒に紹介。「日記マンガ2」ってコトになるのかな。ヴォリューム的にはシリーズ最大。内容は、前回のキャラたちが大会に参加したときのお話。ここで各々のキャラ達がより鮮明化されていく。ダンス・シーンも増え、魅力満点。次の「Storm」では今までの作品とは異なるアングルで魅せます。1作目の「日記マンガ」でちらっと見せていた、日常の機微を表現する手法を披露してくれてるんですが、このテイストが欠けていたらここまでハマんなかったかも。ちなみに、この作品は「Team Generation-X STRIKER」という同人誌からの再録の様です(ジャケも流用)。で、最新刊の「夏よこ〜」。こちらは全篇日常生活をフィーチャー。ケイ&コユキの小学生双子おにゃのこブレイカーズがメインで、キュートさ満点で萌え死にそうです。俺がことさら日常モノに弱いっていうのをさっぴいても、この瑞々しい日常の描写は魅力的ではないかと。ちなみに今回収録されてる「プール水。」は「Team Generation-X2003七夕号」からの再録。蛇足ですが、シリーズ全ての裏ジャケには写真が使われてるんですが、これがベタなんだけど結構沁みたり。
 ここまで褒めてばっかですが、贔屓の引き倒しになってもアレなんで、幾つか問題点を指摘しておきます。まず、やはりキャラ紹介は必要かと。「日記マンガ2」以外は無いので、ちょっと分かりにくいです。それと、タイトル等で使われているグラフ(エアロソール・アート)には、どこかになんて書いてあるかを表記した方が良いかも。ヒップホップ・カルチャーに興味の無い人には全く読めないと思いますから。後書きなどで用語解説がついているのは大変ナイスなアイディアですが、作品世界をより理解するための映像や音源の紹介なんかがあっても良いかと思いました。どんな曲で踊ってるのか、このmoveは実際にはどんな動きなのか、そういったものを知るためのレコードやVTRに関する情報なんかがあれば、より一層深く作品にのめり込んでいけるのではないかと。俺はそれなりにヒップホップが好きなんである程度イメージは湧きますが、同人界でヒップホップ・カルチャーに興味ある人ってかなり少数派だと思うのですよ。メタルは多いしパンクも近年増えてきましたが、ラップとかに言及してる作家さんってホント少ないのが実情。また、ヒップホップ云々抜きにしても情報が少ないのは確かなんで、単純に現役のダンサーさんである絵夢原さんの視点やスタンスなんかには興味があります。
 えらく長々と書きましたが、単純に面白いし魅力的なんで読んでいただきたい!と。まだまだ未完成ですが、何かしら人に訴えかけるモノを持ってる作家さんなんで、是非一度チェックしていただききたい。とりあえず万人向けな「夏よこプール」をお薦めします。10月の関西コミティアからは朋さんという方と「E★T STYLE」というユニットでも活動されるそうなんで、そっちも期待。何はともあれ大推薦でございます。