ここんとこ単行本がコンスタントにリリースされてる志村貴子さんの新刊は、ちょっと異色な物語。5年前に突然失踪したヴィジュアル系女子レスラーが、ひょこり子供を連れて元の団体に帰ってきて〜、というお話。とりあえず、志村さんのスポーツものっていうだけで相当意外です。結構試合のシーンとかも描いてるし。主人公はいつもの真性ダメ人間ほどではないにしても、やっぱりらしいカンジです。ここ一番で逃げ出しちゃったり、周囲に迷惑かけまくったりで相変わらずなタイプの主人公なんですが、この人の漫画の魅力ってやっぱこういうダメ人間(厳密に言えば、ダメ人間半歩手前)が、消極的だったり後ろ向きだったりしながらも、それでもちょっと足掻いてみたり抵抗を試みたりするところだと思うんですよ。ここでミソなのが、あくまでも消極的ってトコ。「こんなんじゃダメだ!俺は変わるぜ!」っていうようなPositive Go!な姿勢ではなくて、Loserの最後の意地っていうか。半ば以上諦めてるんだけど、それでもほんの少し残ってる漠然とした気持ち、そんな希望なんだか意地なんだかよくわからないような感情が、俺にはなんとも沁みるのですよ。今回はそんないつものテイストを踏まえつつ、女子プロレスという設定を使って逆ギレ気味な感情の発露などを取り入れて、展開に起伏&緩急がつきました。ですんで、いままで志村さんの作品に馴染めなかった人もちょっとチェックしてみて欲しいですね。