女子高生格闘漫画の3rd。とはいえ、ガチガチのリアル路線ではなく、コメディをベースにした作品なので、格闘技に興味がない人でも楽しめる仕上がり。作者のイダ氏は、元々はオカルト/ホラー系の作品を数多く手掛けていたのだが、前作「ゴルディアス」辺りからそういった世界観にエンターテインメント性が加味されてきた。この作品ではさらにその路線を加速させ、エンターテインメントを作品の柱に据えてきた。それに伴い、出版社も移籍(以前は講談社が主戦場)。まさに心機一転といった趣だが、それは功を奏したといえよう。
 イダ氏の絵は、線が少なくシンプルなのだが、構図や決め絵の見せ方がカッコいい。それ故に、シンプルな絵柄も、スピード感やソリッドさを醸し出す武器となる。そういった格闘シーンで女子高生たちが制服やブルマ姿で乱舞。鼻血を出しながらシバきあい、ぱんつ見せつつ関節を極める(エロくないよ、念の為)。もう痛快、痛快。ストーリーテリングも文句なし。もうベテランの領域に入りつつあるだけに、緩急自在。今回はM奴隷(男)と闘ったり、24時間借金返済バトルをやったり、米軍基地でメリケン娘達とキャットファイトしたりと、やりたい放題のエピソード満載。とにかくおススメです。

  • 「透明な鳥」

 あぁ、まだ描いててくれたんだ。1stがリリースされたのが99年の4月だったからなぁ・・・。雑誌ではぽつぽつ描いてたみたいだけど、チェックいれてないんで、ホント久々に作品を読みました。俺的にブランクがあっただけで、作品のテイストは変わってなかった(良い意味で)。相変わらず優しく、そして切ない短編の数々。一応成人漫画にカテゴライズされてはいるが、本質的な魅力は間違いなく少女漫画的な味わいにある(しかも、今の主流ではない)。その読後の感触は、一昔前の「花とゆめ」などを読んだ時のそれに近い。
 前作でも沁みる作品が散見できたが、今作も泣ける。特に、「僕らは冬に目を覚ます」「温かな日」「透明な鳥」「たゆたうことば」辺りが珠玉。ここで淡々とした展開で語られる喪失感や諦念、そして希望は、ゆるやかに読み手の心に訴えかけてくる。派手さは皆無だし、華やかさにも欠けてはいるが、伝えるべき言葉や物語を秘めている方なので、今後もそんな作品を伝えて欲しい。大推薦。