10/13の記憶

 金曜の夜に、某バンドのレコーディングを拝みに小岩に行ってきまして。
 レコーディング作業に立ち会ってて、個人的に何が一番面白いかっていうと「曲」が完成するまでの「過程」を見れる*1トコなのですよ。曲毎のこだわりの部分とかが垣間見れるんですが、それって普段ライブで観たり音源で聴いたりしてるだけじゃ見えない部分だったりするコトがままあるワケで。そこを知るコトによって、今まで見えなかった部分が色々見えてきたりするのが、なかなか興味深く、面白いなぁ、と。それを味わうべく、馳せ参じようと思い立ちまして。
 先週NMさんと会ったときに「小岩まで来れば車で拾いに行きますよー」とのお言葉を賜ってたので、22時に小岩での待ち合わせの約束を取り付けるも、20時前に家を出るワタクシ。小岩に向かうには、ちと早い時間ですが、まぁ例によってアキバに立ち寄ろうと目論んでいたワケで。や、「ぷにケット」のカタログが欲しかったのねん。
 空いてる私鉄と若干混んでるJRを経て、アキバには21時過ぎに到着。一昔前なら、すでにアキバの街は終了風味な時間帯。実際、K-BOOKSヤマギワソフマップ、TRADERなどの主だった店は閉店しているのですが「メロンブックス」と「とらのあな」という両巨頭は22時まで営業していまして、なんとも頼もしいかぎり。つーコトで、まずはメロンに。店内は、お勤め帰り・・・とは微妙に異なる面々が、それなりに集っておりまして、意外と活況を呈しておりました。
 21時41分発の総武線に乗らないとアウトだったもんで、入念なチェックは諦め、平積みされてる本を中心に、ざっくりとチェック。幸い、お目当てのぷにケのカタログはあっさりと見つかり、各種単行本と共に購入し、そそくさととらに移動。とらも5Fからざっと流し、買いそびれてたeastthreeと丸太道場の新刊を買うに止まる。この時点で時刻は既に21時半を回っていたので、更なる探索は諦め、駅へと舞い戻り、一路小岩へ。するとNMさんから連絡が入り、現在某駅にいるので、小岩じゃなく、その駅で合流しようってコトになりまして、指定された駅で無事にNMさんと合流。見れば私服だし、各種機材も持参されてたので、このままスタジオに直行・・・と思いきや、足りない機材を取りに一度自宅に戻るとのコトでしたので、タクシーに乗ってNMさん宅へ。そこでオープンリール*2等の機材を詰め込んで、NMさんの車で小岩に向けて出発。
 道中、最近NMさんに教えてもらったStanicpornocultshopとかアルゼンチン音響系の音源とかを聴きつつ、音楽話に花を咲かせる。アルゼンチン音響派のウワサは小耳には挟んでいたものの、ちゃんと聴いたコトがなかったので、実に刺激的。ちょっとずつ有名どころからチェック入れていこう。それと、絶妙なコラージュ感覚とビートのセンスが鮮烈なStanicpornocultshopも凄い。こんなバンドが日本にいたなんて、知らなかったですよ・・・。そのうち一度はライブを拝まなければ*3
 途中、KRさんやKZさんとかと連絡を取りつつ、コンビニで差し入れ等を買い込んでから、お目当てのスタジオに到着。すると、先行してたHTさんやKRさんが出迎えてくださいまして、機材とかを運び込む。今回のレコーディング場所は、MDさんがエンジニアを務めているトコでして、録音に携わるのもMDさんだけですんで、気楽気楽w。
 レコーディングは、演奏するフロアと、それを録音&調整するフロアが分かれてまして、ちとビックリ。録り方も、一人ずつ演奏するのではなく、全員で一緒に演奏しつつも個別に録っていくというスタイルだそうで。個別の録り直しとかも可能だそうで。デジタルっつーかPro Toolsってすげー・・・と感心しきり。ま、ワタクシの知識が乏しいだけで、こんなの驚くに値しないコトなんでしょうが。
 既にGとDsの音作りは済んでいたので、NMさんは早速Bの音作りをするためにKRさんと共に演奏フロアへと消えていったので、手が空いてたHTさんとオタ話に興じてみたり。すると、程なくしてWALL帰りのKZさんが千鳥足で登場。挨拶もそこそこに、いきなり床に倒れ、ぴくりとも動かなくなるという漢を感じさせる挙動に感動w。しゃーないので暫し放置していると、やがて復活。それと共にいきなりスイッチが入り、各種ジャンルについて熱く語り始めるという脅威の緩急っぷりを披露w。ホント極端だなぁw。ちなみに、レコーディングにも若干つきあったものの、途中で寝落ちしてしまい、朝までぐっすりと床で寝倒してらっしゃいましたよw。
 てなイベントを消費してる間にNMさんのセッティングが済んだので、いよいよレコーディング開始。ワタクシも演奏フロアについていくと、広々としたフロアには所狭しと見慣れたエフェクター群が鎮座ましましていたのですが、それ以上に目を引いたのが、通常のシールドの比ではない超極太なケーブル類と、それが刺さっているコネクター*4。ワタクシのような素人には見るもの全てが物珍しく、それだけでも来た甲斐があったというもの。録音の邪魔にならない場所に腰を降ろし、準備万端。メンバーは各々ヘッドフォンを装着し、それで他のメンバーの音を聴いたり、階上のMDさんの声を聴いたりするワケで。
 で、いざ録音が始まると、ドラムの音以外殆ど聴こえなかったり。それもそのはず、ギターとベースのアンプはレコーディングしてる室内には設置されておらず、それぞれ隔離されたスペースに設置されていたので、当然室内に聴こえる音はドラムが主になるワケで。だもんで、普段は気付かないようなドラムの細かい音の鳴りの差異やミスとかが判別出来て、なかなか面白い。普段は曲のパーツのみを抽出して聴く、なんて凝ったマネはしないのですが、いろんな音楽をそうやって聴いてみるのも面白いかも・・・とか思った次第。
 今回レコーディングする曲は4曲。少なく思えるかもしれませんが、これがなかなかどうして大変な作業なワケで。音にこだわりを持ったメンバーが揃っているので、一発OKなんてコトは皆無で、比較的良好と思えるテイクをキープしつつ、何度も録り直すというスタイル。で、リテイクが重なる曲は後回しにして、どんどん次の曲に移行していったり、小休止を入れていったりしてたのですが、これが功を奏し、ドツボにハマるという負のスパイラルを未然に回避していけたので、結構順調にレコーディングは進行。こういう見切りの上手さや間の取り方に、レコーディングの場数を踏んでる安定感を感じずにはいられない。
 ワタクシは、そんな様を場所を転々と移動しながら拝見していたのですが、とりわけ面白かったのが、ギター・アンプが隔離してあるスペース。ここでは、ほぼギターの音しか聴こえないのですが、それは即ちKRさんの偏執狂的と言っても過言ではない程にこだわりぬかれたギター・サウンドを心底堪能出来るスポットであるワケで。だもんで、普段のライブでは味わうことの出来ない音の機微を鮮明に味わうことが出来まして、これがすこぶる面白さ。ある種シューゲイザー風味な瞬間なんかも感じられて、結構繊細なテイストも感じられまして。それと共に、このバンドがいかに狂ったテクスチャーの楽曲を演奏しているかっていうコトを再認識させられた次第。細部に至るまで神経が行き届いてて「らしさ」が確立されてるなぁ、と感心しきり。
 途中何度か小休止を挟みつつも、なんとかベーシック・トラックを録り終える。が、KRさんが一部分だけ納得のいかない部分があり、そこはパンチ・インで対処するコトに。平たく言うと、録音したトラックのギター・パート*5を数秒間だけ録り直し、それを元のトラックにはめ込むという手法。僅か数秒のパート*6ではありますが、それを10回近くも録り直して、ようやく納得のいくテイクが録れたので、今度こそベーシック・トラックが完成。4人編成になってからの味付けを施した、限りなく真っ当に近いHCな仕上がりで、HC界隈の住人には一番評価され易いサウンドかと。駄菓子菓子、こんな真っ当な音で済むはずもなく・・・w。
 ともあれ、これでHTさんは御役御免。が、KRさんとNMさんは、さらにGやBを重ねていく作業があるので、すぐに演奏フロアに移動。ワタクシとHTさんは、懲りずに秋新番について熱く語りあっていたのですが・・・そこに、あれほど緻密に録音したベーシック・トラックを台無しにする勢いで轟音ノイズが鳴り響いてきましてw。やっぱ、このバンドはこうでなくちゃいかん!と思いつつも、なにげにシンプルなトラックも気に入っていたので、ちと惜しい気がしないでもなくw。シークレット・トラックとして収録しちゃえば良いのに。使用前、使用後、みたいなノリが面白そうですが。
 ちょっとずつ音が重ねられていき、その都度曲の表情が変化していくのですが、面白いモンで、初めこそ前述したようにシンプルな音も捨て難い・・・とか思ってたのですが、ノイズ成分が高まっていくにつれ、そんな考えはあさっての方向に吹き飛んでいってしまいまして。緻密に録られたベーシック・トラックがあるが故に、どんなに轟音を混ぜても衝動っぷりがスポイルされない印象。これにKYさんの咆哮が乗った時のコトを考えると、○蜜柑さんの原稿ばりに「ぞくっ・・・ぞくぞくっ」ってな擬音が宙を舞ってしまいそうですよ?
 それにしても、ベーシック・トラックの録音の際には終始難しい顔をしていたKRさんとNMさんが、ノイズとかを重ねる段になると、その表情を一変させ、嬉々としてあれこれ音色を工夫してる様を目の当たりにし、その好事家っぷに半ば呆れてみたりw。
 そんなこんなで、空が白んできた頃にようやくトラックのレコ−ディングは終了・・・と思いきや、その勢いでインプロっつーかジャムっぽいテイクも録ろうってなコトになりまして、録音フロアに全員勢揃い。ここぞとばかりに弦楽器のお二方は手持ちのエフェクターを繋げまくってました。如何せん演奏フロアで聴いてたんで、ドラム以外の音はよく分からずじまいだったのが惜しかった・・・。ま、朝の6時半に轟音とかはあんま聴きたくなかったんで、そういう意味では好かったんですがねw。
 つーコトで、初日の全工程終了。後片付けをしたり、まったりと談笑したりした後にお開きとなったのでした。正直、完全に「賑やかし」だったので申し訳なかったのですが、とても面白く、貴重な体験をさせていただきましたよ。KYさんの声録りを拝めなかったのが心残りではありましたが、二日連続で観に行く気力も無かったしーw。
 各種マスタリングを経た後に、どういう「楽曲」と化して世に出回るコトになるのかが、とても楽しみでございますよ。きちんとした音と流通でリリースされれば、結構話題になると思うんだけどね。

*1:聴ける

*2:録音用ではなく、テープ・エコー用

*3:実は、まさにこの夜に東京でStanicpornocultshopのライブがあったのですよ・・・。滅多に東京ではライブをやらないそうなんで、惜しい機会を逸してしまった・・・

*4:マイク類のケーブルだとか

*5:今回の場合は、ですが

*6:ちなみに、そのパートを単音のクリアな音で聴くと、ビックリするくらいemoかったのが印象的。emo violenceの面目躍如と言うべきか