9/17 "Tsuchiya and Do It vol.2"@八王子Rinky Dink Studio/ENCROACHED/HAMK/FOUR TOMORROW/CRADLE TO GRAVE/THIRSTY CHORDS/BLOTTO

 この日の最大の目的はスクラン14巻の限定版を探すコトだったのですが、八王子に行く途中で経由した橋本の本屋であっさりと見つけてしまい、早くも終了風味。なんとなくテンションも低かったので、そのまま帰っちゃおうかとも思いましたが、なんとか踏みとどまって、八王子へ。
 当初の予定ではまんが王やヨドバシとかに寄るはずだったのですが、前述したように目的のブツは入手済みだったせいもあり、遠回りになるルートを避け、素直にRinky Dink Studioへ。開場時間は過ぎていましたが、開演までは時間があったので、階下のSENSELESS RECORDに寄ろうかと思ったのですが、なんか大勢店の前でたむろってて鬱陶しかったんで、回避して会場へ。階下とは打って変わって、会場のフロアは殆ど人がおらず・・・つーか、まだ開場してなさそうだったので、暫しフロアの椅子に座ってぼんやりとしていると、ANTさんと遭遇。談笑しながら時間を潰していると、ようやく時間に。
 トップはENCROACHED。本日唯一のHCバンドがトップに出るっていうのは、どうにもバランスが悪いなぁ・・・と思ったのですが、どうも当初トップだったバンドが間に合わなかったそうで、急遽トップに繰り上がっちゃったとか。個人的には、この変更は失敗だったと思う・・・。理由は後述。
 この日は、本来ステージである部分を物販コーナーにし、フロアでライブするという区分けだったのですが・・・狭い。昨年、同様の区分けでライブを観たときは、もう少し広かった気がするのだが・・・と思ってる間にスタート。ENCROACHEDを観るのは結構久しぶりなんですが、一聴してそれと分かるほど、バック陣が成長。以前はマエダさんのテンションとバックのテンションがかみ合わない時があったのですが、今は全員の音から情念が滲み出ており、充実の熱さ。ところが、序盤はマエダさんが明らかに乗り切れていない。スペースの狭さを気にしていて、自らを解放出来ないでいるのがありありと見て取れまして、ちと心配になるw。
 が、3曲目あたりから吹っ切れてきたのか、狭さを気にせず自由に動き出し、客のほうとかに突っ込んでくるようになってから、ようやくバンドとして歯車が噛み合いだす。切れ味の良いリフと埃っぽいベース、そしてバタバタとつんのめりまくるパワフルなドラムをバックにマエダさんの咆哮が絡み合うraging thrashサウンドは、様々なHCの要素が感じられるのですが、それをきっちりと咀嚼し自分たちのサウンドへと昇華させているので、意外と「〜風」とカテゴライズしにくい独自性を獲得しているなぁ、と感心。
 そんなENCROACHEDの今回のハイライトは、新曲であるミッドテンポのナンバー。今までは、疾走疾走また疾走ってなイメージが強かったのですが、ここにきて一皮剥けたというか、さらなる高みへと昇ろうという意思を感じさせる意欲的なナンバーを披露してくれまして、微妙にフロアの反応は鈍かったものの、個人的には大興奮。新境地開拓!ってなカンジで、カッコよかったです。終演後、マエダさんに話を聞いたら、やはり展開に幅を持たせるために従来とは異なるテイストのミッドの曲を導入してみた、とのコトでした。今後、あと数曲こういった曲を織り込めるようになったら、一層スケールのデカい存在になるのではないかと。そんな可能性を感じさせるミッドの曲を経て、再度加速してファスト・チューンを連発してフィニッシュ。演奏のタイミングのミスとかもありましたが、そんな瑣末なコトを吹き飛ばす、怒濤の勢いに乾杯。
 お次は、HAMK(ハンク)というバンド。事前のフライヤーとかでは名を見かけなかったバンドなのですが、どうも徳島のバンドのようで、なんか出るまで色々あった模様。編成はvox&G、B、Dsで、Dsはヘルプ*1。のっけからかなりダミ声というか聴き辛い声で歌ってまして、LEATHERFACEとかを意識し過ぎてるのか?と穿った考えを抱いてしまいましたが、途中のMCでvoxが喉を傷めているという事実を告白したので、納得。序盤こそ若干聴き苦しかったのですが*2、途中から曲調も大人しめになり、voxもこなれてきまして。すると、だんだんvoxの歌声が、節回しの面なんかも含めて、どうにも聴き覚えのあるような調子になってきまして。脳内で検索した結果、初期の磯部さん*3の歌声に酷似してるという事実に気が付く。あの狂おしく、ちとしゃがれたカンジが再現されてて、なかなか。ただ、これが喉を傷めてるせいなのか、普段からこうなのかの判別は出来ず。そこら辺の検証は、購入してきた音源で検証したいトコロ*4
 勢いのあるナンバーもありますが、基本は非emoで、ちょっと翳りのあるポップなメロディが持ち味のギター・パンク路線*5。特別に凝ったテクスチャーの楽曲とかもなく、ただただ良い曲を紡ぐコトにこだわってる印象。NAVELやSEE HER TONITEらと同様の、ちょっと不器用なんだけど音楽と誠実に向き合ってるような印象を持ちました。今回はドラムがヘルプだったり、voxの喉の調子が悪かったりしたので、正当な評価は次回に譲るとしますが、個人的には大いに魅力を感じた次第。
 お次はFOUR TOMORROWというバンド。埼玉のバンドだそうで。メンバーの全員が歌ったりコーラスを入れたりするというDILLINGER FOURスタイル。ラフなポップ・パンクがベースではあるのですが、結構展開は凝ってて曲も長く、このテのサウンドのわりにはテクニックもそこそこしっかりしてました。フロアも大いに盛り上がっており、この日1、2を争う人気っぷりを披露。ただ、個人的には、ちと「軽さ*6」が気になって、あんま楽しめなかった。なんつーか、楽しげに演奏してるのは良いと思うんだけど、それだけだとワタクシのようなジジィには、ちと辛いのですよ。聴いてて、観てて全然悪くはないんだけど、肝心の音から何も伝わってこないので、演奏が終わっても「なるほど」としか思えませんでした。とは言え、大多数の方々は楽しんでらっしゃったので、単にワタクシが偏屈なだけでしょう。
 お次は、今日のお目当てでもあったCRADLE TO GRAVE。前身バンドのSPROCKET WHEELは、個人的にご縁もあったので、凄く思い入れがあったのですが、解散後に結成されたCRADLE TO GRAVEとWATER CLOSETは、どっちも最初の音源でピンと来ず、以降チェックしなくなったのでした・・・。が、今度スプロケが再結成ライブをやったりするってな出来事なんかもありまして、良い機会だから一度ナマのCTGを拝んでみるか・・・と思い立ちまして。
 メンバーは、vox&G、G、B、Ds。フロントはex.SPROCKET WHEELにJUST ONE DAYか・・・感慨深いのぉ。で、Dsの外国のお方は誰*7期待と不安が入り混じる複雑な心境の下、放たれた音は、燻し銀としか言いようの無い苦みばしったpunk rockサウンド。あぁ、やっぱナマで聴いたほうが全然カッコ良いな。以前聴いた音源よりもポップさが増している印象なのですが、そのポップさは必要最低限にまで抑えこまれており、基本は荒々しくも骨太で、無骨。そんなサウンドを彩るリッキーさんのギター・ワークは、当然のようにスプロケ時代よりも流暢であり、より洗練されてました。そこら辺のサウンドの対比も面白いなぁ、と。一方のマルさんも、スプロケ時代には余り見られなかったフィードバック奏法とかも交えて応戦。こういうところに、成長の跡なんかが窺えますな。途中、マルさんのギター・トラブルなんかもありましたが、最後まで情熱的で真摯な姿勢は変わらず、情念を迸らせまくっておりました。うん、なかなかカッコ良かった。終演後、マルさんにちょろっと声をかけてみたり。7〜8年ぶりぐらいだったんですが、まだ覚えててくださって、ちょみっと嬉しかったりw。
 次はTHIRSTY CHORDSというバンドで、from徳島。これまたLEATHERFACEやHOT WATER MUSICの影響を感じさせるバンドだったのですが、ドラムボーカルで、しかも日本語詩というのがなかなか異色。とは言え、同系列のバンドばっかだったんで、正直食傷気味な感は否めず。途中、速い曲とかも織り込んでて、色々工夫の跡は感じられたのですが・・・。ラストのBLOTTOも同様。これまたLEATHERFACE云々ってなカンジのサウンドで、流石に閉口。とりあえず人気があるコトは分かりましたが、個人的にはFOUR TOMORROWと同様に、音から特に感じるものは無く、ほぼ印象に残らず。印象に残ってるのは、ベースの人か誰かがセッティングの合間とかに爪弾いていたDESCENDENTSとかのフレーズだけw。

総括

 唯一の異色の存在であったENCROACHEDを、アクシデントのせいとはいえトップに据えてしまったコトにより、イベントとしての流れはかなり最悪だった気がします。同系列のバンドが延々続くのは・・・辛い。これがHCだと、楽曲云々よりもバンドとしてのパワーや情念に重きが置かれるので、それなりに楽しめるのですが、この日のように楽曲重視のバンドの場合は、そうもいかない。正直、どのバンドも現時点に於いては突出した才能の煌きを見せてくれてるワケではないので、そういったアンダーグラウンド・レベルの平均的な、しかも基本的に同系列のバンドの楽曲を延々聴かせられると、単体で聴けば判別出来るであろう個性など無いが如しっつーか、正直十把一絡げにしか聴こえないワケで。
 ま、それはあくまでもワタクシの主観であって、このテのサウンドが好きな人にとっては、たまらない企画だったのやもしれませぬ。そういった企画であるコトを認識せず、のこのこと出向いた挙句に勝手なコトをぬかすのは・・・まぁ、お門違いなんでしょうね。実際、あの場にいた大半の方は盛り上がってらっしゃいましたから。でも、あの盛り上がり方って、限りなく馴れ合いに近いモノを感じてしまったのは、ワタクシだけかしら?
 あの集客力や盛り上がり様だけを見ると、シーンが形成されてるようにも一見思えるのですが、肝心のバンドが類型化してたり、良い意味でのライバル心とかが感じられず、どうにもぬるま湯っぽくて、大学のサークル活動の延長線上のような印象が否めないのですが。かつての、90年代中期〜後期頃のスタジオライブ全盛期の様な高い意識*8とかは感じられず、ただただ屈託無く楽しんでるように見えてしまう*9のも、サークル云々と思ってしまう由縁。別にそうやって屈託無く楽しむのが悪いワケじゃないんだけど、あたしゃそんな場に行ってるヒマは無ぇな、と。せっかく確固たる基盤があるんだから、そこに収まってないで、もっともっと色んな意味で「広げて」いって欲しいって思っちゃうんですけどね。

*1:後で登場した、同郷のTHIRSTY CHORDSの人が叩いてました

*2:でも、音は外して無かった

*3:ex.HUSKING BEE

*4:アルバムでは、もっと素直な声質だったので、喉の影響だった模様。ある意味、良いときに観れたのかもw

*5:アルバムでは、ほとんどGuitar Popと言っても差し支えの無いテイストでした

*6:音も姿勢も

*7:なんでも、Chrisという方だそうで。以前の経歴は不明

*8:良くも悪くも

*9:実際のトコは知る由も無いのだけど、ファンジンとかで自分たちの意見を伝えようとする動きとかも無さげだし