Z/the evens@東墨田八広ハウス

 事前予約制*1で開催された*2、evensのハウス・ショウに行ってきますた。場所は、八広にある民家w。民家とはいっても、実際には廃工場*3みたいなトコで、なんかそこに5人ぐらい住んでるんだとか。
 当初は俺一人で行くハメになるかと思ってたのですが、mixiのお知り合いのKさんも参戦するそうだったので、八広駅で落ち合って、件の会場を目指す。道中それっぽい人も見当たらず、すでに夜の帳は下りており、漠然とした不安に駆られるも、道端に停めてあったバンにZの魚頭さんがおり、一安心w。Kさんは魚頭さんと知り合いなので、会場までの道を訊き、事なきをえる。
 教えられた道をてくてく歩き、途中、evensのAmyと普通にエンカウントしたりしつつ、会場に到着。そこは、見紛う事なき廃工場。微かに灯っている裸電球の頼りない明かりぐらいしか照明も無く、実にカオティックな雰囲気。そんな明かりを頼りに、奥にある木製の階段を昇って会場内へ。場内の造りは、ほんっとに古式ゆかしい旧式な造りになってまして、ノスタルジックなテイスト満々。大雑把なイメージとしては、DASH村のカンジを想像していただければw。あれをもう少し近代風にして、大幅なボロっちくしたようなカンジw。
 とりあえず入り口で受付を済ませ*4場内に進入。時刻が18時半前だったせいもあり、結構人は集まってました。その中に、ディストロをやってる顔見知りの方もいらっしゃいまして、しばし歓談した後にディストロの音源をちょっと購入。そうこうしてるうちに開演時刻の19時が近づいてきまして、前方に陣取る。
 髪を切ってさっぱりとした*5根本さんから、今日のアナウンスが。ここは民家なんで、入り口付近にたむろしないとか、ライブ中は禁煙とか、音漏れ対策としてライブ中は入り口をシャットアウトするから場内は蒸し暑くなるwとか。そういった諸注意の後、前方の客が座り、Zの演奏が開始。
 Zはex.THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUTのメンバーが中心となって結成されたバンド。個人的にはSWIPE後期以降のサウンドはあんま趣味じゃなかったので、期待してなかったのですが、そんな俺の認識の甘さを、メンバーに対して平謝りしてしまいたくなるぐらいカッコ良かった!メンバーは4人なんですが、楽器編成が凝ってまして、アルトサックス&フルート&テナーサックス*6&vox、G&コントラバス*7、B&アルトサックス、そしてDs。
 サウンドとしては、クラウト・ロック〜ジャーマン・プログレポスト・ロック辺りの影響を感じさせる浮遊感と不穏感を内包したサウンドをバックに、根本さんのサックスとvoxが切り込んでくるスタイル。適度なループ感でトランシーさも発揮してまして、かなり麻薬的な響き。しかも、こういったスタイルのサウンドにHCの激情っぷりを注入してるもんだから、もう熱い熱い。ときにパーカッシヴに、ときに不穏なメロディを紡ぐG、パワフルでグルーヴィなリズム隊、サックスも哀愁を感じさせるフレーズを聴かせてくれ、管楽器つながりで、なんとなくこだま和文を彷彿とさせる瞬間も。フルートはまだ改善の余地があると思ったし、コントラバスもあまり必然性は感じなかった*8けど、その音楽に対する貪欲さやチャレンジャブルな姿勢は評価したいトコロ。
 あと、voxの言語感覚とかもナイス。今回は歌詞を書いた紙を配布してなかったんで、詳細は分かりませんが、内容とともに歌唱法とかも面白かった。スポークンワード的っていうか、かなり「伝える」コトを前面に押し出したスタイルで、一言一句を大切にしてた印象。なんとなく、日本語ラップとかにも通じていきそうな展開を感じたんですが、どうなのかな?
 後半にはHC成分高めな曲なんかも披露してくれて、かなりもってかれましたね。世間的な評価の高さも頷けるクオリティ。年明け〜来年初頭にはアルバムを出したい、とのコトでしたんで、期待したいですね。
 ここで一旦機材入れ替えタイムで小休止。ちょっと外で涼んだ後、早めに場内に帰ってくると、Ian MacKaye先生キタ━━━ヽ(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)人(∀゜ )人(゜∀゜)人( ゜∀)ノ━━━!!!!うわー、至近距離にIan先生のお姿が・・・ッ!1996年のFUGAZI来日以来なんで、実に9年ぶりに拝みましたよ、あたしゃ。当然のように、初手から激写しまくりw。セッティングの最中からバシャバシャやっちゃいましてよ?
 そんなカンジで視姦してたのですが、肝心のセッティングで問題発生。なんか電圧が安定せず、アンプの出音が定まらない。結局アンプを交換し、電源を別の部屋からとることで、なんとか安定し、セッティング完了。俺はIan先生のまん前というポジションをゲットし、ご満悦。スタート前、Ianから今日の鑑賞スタイル*9やとかに対するアナウンスがありました。「本当に革新的な事はこういうところから生まれるのであって、公共の場からはけして生まれない」といったニュアンスの発言も飛び出し、ちょっと期待が高まる。
 実はthe evensにはあんま期待してなかったのよね。アルバム持ってないし、以前聴いたサンプルの曲は音響フォークってなカンジでイマイチ「ピン」とこなかったのですよ。だから、今回は「間近でian先生が拝めれば良いや」ぐらいな軽い気持ちで来たのですよ。ところが、いざ蓋を開けてみれば、そんな俺の軽い気持ちを余裕で蹴散らす凄まじい演奏が披露されたのです。
 the evensは、Ian先生とex.WARMERSのAmy Farinaのユニットでして、Ian先生はバリトンギター&vox、AmyはDs&voxという役どころ。ちょっと頭でっかちで、まったりとした演奏になるんだろうなぁ・・・とか思ってたら、あにはからんや、地味なれど妙にパーカッシヴなカッティングでリフを切り刻んでますよ?Amyのドラミングも、少ない手数できっちりとグルーヴを醸し出しており、実に滋味深い味わい。なにげにサウンドのバランスとかもAmyが調整しており*10、しっかりと存在感をアピール。そんなサウンドをバックに、IanとAmyのかけあいのvoxが交錯。このかけあいが、実に素晴らしかった。Amyが引っ張ってIanが切り込んできたり、Ianの後を受けてAmyが歌ったり、囁くような声が交わされあったりと、声一つとっても、その機微を余すところなく表現しており、深く深く心に沁み渡る・・・。
 かと思えば、突然Ianの表情が豹変し、かつてMINOR THREATやFUGAZIで見せてくれた烈火の如きオーラを身に纏いながら、怒濤のカッティングを炸裂させる。そのカッティングが凄まじくカッコ良く、もう全身鳥肌たちまくり。パーカッシヴに刻みつつも、随所にDCらしい「タメ」や「間」を効かせており、そのセンスが抜群過ぎ。バリトンギター特有の艶やかな音色も麗しく、一心不乱にリフを掻き毟っていたIanの姿が眩い・・・*11
 Ianは、大人になったワケでも、枯れたワケでも無かった。長きに渡ってHCシーンのみならず、アンダーグラウンドのロック界を牽引し、世界中で今なお愛され、影響を与え続けている稀代のカリスマは、今だに「ハードコア」そのものだった。演奏形態やサウンドこそ変遷しているが、その姿勢は常に揺らぐことなく、一本筋が通っている、という事実を再認識させられました。それと、やっぱこの人は自分の持ってる「力」を自覚してるよね。自分の言動がシーンに大してどれだけの影響を及ぼすかのかっていうコトを充分認識していて、それを避けもせず、かといって無論誇張するようなこともなく、誠実な言動を心がけているのだなぁ、と思いましたよ。なんかもうホントにカッコ良いなぁ!ニクいあんちくしょうってカンジですよw?
 結局、アンコールも含め、1時間に渡って演奏してくれまして、もう大大大満足。終演後、真っ先に握手を求め、がっつりと握手してもらっちゃったりw。それを口火に、Ian先生は客に囲まれ、握手からサイン、果ては写真撮影なんかもしてました。前にインタビューでそういう行為は好きじゃないって言ってたケド、カンベンしてくださいw。なんかギターとかにもサインしてたよw。ちなみに、俺もしっかりその後サインを貰い*12、ツーショット写真も撮っちゃったりw。つーか、こんなチャンスにIanに声をかけなくてどうするんだ、と。いやもう悔い無しっスよw。
 その後、Kさんと「最高!」とか言い合いながらw浅草橋まで移動し、そこでメシを食ってからお別れし、帰路に着いたのでした。
 実は、初日と比べても明らかに今日のevensは出来が良かったそうなので、もしかしたら今回のツアーのピークだったのかもしれないけど、これがアベレージでのクオリティなのだとしたら、一度でもIanに魅せられた方々は、万難を排して残りの公演のいずれかを観に行くべし。「FUGAZIじゃないから」とか言って見なかったら、ホント後悔するよ?今年観たライブの中でも屈指の素晴らしさだった、と断言出来ます。自分の語彙の無さや表現のヘタさのせいで、この感動は伝わりにくいとは思うんだけど、本当に素晴らしいバンドですんで、是非ともこの機会を逃さずに観に行ってみてください!

*1:かなりの人数が予約期間に間に合わず、涙を飲んだとか

*2:限定70人

*3:80's Thrash MetalのP.V.に出てくるようなデカいのではなく、所謂「町工場」みたいなトコね

*4:ちなみに、料金は事前振込制で、その際にパスワードが交付され、受付ではパスワードと名前を言う、というシステムだったのです

*5:某ラッパーの似てる気がしたのは、俺だけかw?

*6:多分

*7:ウッドベースかな?弓で弾いてたんで、コントラバスかと思っちゃったケド

*8:使用してた時間、正味10秒ぐらいw。でも、アンプにつなげて放置してたときに低周波の微かなノイズが鳴り続けてて、それはやたらカッコ良かったなぁ

*9:全員着席して観たのです

*10:ドラムキットの背後のコンソールで、曲によってエフェクトのかけ方とかを調整してました。dubbyなサウンドとかも飛び出したよ

*11:終演後には汗びっしょりでした>Ian

*12:ちゃんと名前も書いてもらったぜw